マラルメは、1842年にパリで生まれ、1898年、56歳で帰らぬ人となりました。
彼は、エドガー・ア・ランポーの影響を受け、コンドルセ中学の教師として英語を教える傍ら、生涯にわたって
詩の可能性を探り、マラルメの詩と思索は難解さをもって世に知られています。
その難解さは、文法的に一般的なフランス語からかけ離れ、文法よりも詩的リズムを重視し、物事を象徴的
に仄めかすことによって何かを伝えようとしたことに起因します。
また、彼の思索の特徴は、文学を中心に据えて考えるところにあり、「世界は一冊の書物に至るために作ら
れている」という彼自身の言葉がそれを表しています。
例えばバレエを「身体で描くエクリチュール(書法)」と表現した有名な言葉は、舞踊の世界に大きな影響を
与えましたが、芸術の表象を「記号」として捕らえたところに、先見の明があります。
ここでは、1998年にジェネラル・フランセーズ社から出版された「マラルメ詩集」の原文を元に、私の好きな
部分を拾い上げて、私なりに解釈した翻訳文を紹介します。
なお、各翻訳文には原文の読みをカタカナで入れました。
これは、マラルメの詩が音楽的で、詩的リズムを大切にしていることをご理解いただくためです。
是非原文を繰返し朗読して、その素晴らしさを味わっていただければ幸いです。