のみしらみ しと
「蚤虱 馬の尿する 枕もと」
俳句の解説: 芭蕉は平泉から出羽へ越えようと尿前(しとまえ)の関をとおろうとし
たところ、冠者と間違えられて夜遅くまで足止めを喰らってしまいました。
夜遅く峠を越えるところで激しい雨にたたられ、途中で封人の家(関守と
農業を兼ねる人の住む家)に留めてもらいました。この家は、曲屋で馬が同
居していたので、夜の暗がりに、蚤・虱にせっつかれながら眠れないままに、
突如馬のしぐさに驚かされた様子をユーモアを交えて表現しています。
「尿」は、「しと」又は「ばり」と読むそうですが、「しと」の方が読み方に品があるの
で、ここでは、「しと」と読むことにしました。
旅の思い出 : 出羽街道中山越えの道はよく復元整備されており、奥の細道をたどる貴重な道で
昔と変わらない山の中の細道を芭蕉の心を忍びながら歩けるところです。
尿前(しとまえ)の関跡から封人の家まで約10kmで3時間余りかかります。
私は尿前の関跡に車を置いて、旧道中山峠を越えて中山平温泉の湯につかりにい
きました。その間にお会いしたのが、山菜採りにこられたご夫婦一組だけでした。
何やらビールの空缶をカンカンたたきながら近づいてきたので、何をしているのかを
お尋ねしたところ、熊が出るとのことでした。それを聞いてから、大声で歌を歌いながら
必死になって歩きましたが、歌の合間に聞こえるのは、小鳥のさえずりと風の音だけで
した。また、途中大深沢、小深沢という深い沢を抜ける折りに蛇と大きな毛虫に出くわし
ギョッとしたのを覚えています。 その時、1句浮かびました。
「蛇毛虫 踏み惑いてや 峠道」
自作
蛇毛虫 踏み惑いてや 峠道