うお なみだ
「行く春や 鳥鳴き魚の 目は泪」
俳句の解説: 旅立ちに当たり、芭蕉は千住大橋のたもとで弟子達に見送られ、
別れの句を詠みました。春が行くように自分も出立するが、二度
と生きて帰れないかもしれない。鳥が鳴き、魚の目にも泪がたま
っていた。
旅の思い出 : この神社は、日光街道へ入る江戸の出口にあたる千住大橋のすぐたもとに
あります。芭蕉はここで弟子たちと別れを告げ、弟子の曾良だけをつれてこの
千住大橋を渡り、日光街道を北上しました。
多くの弟子たちが見送ってくれたようですが、俳句の「魚の目」とは、弟子の
杉山杉風(さんぷう)の目ではないかと考えております。
杉風は蕉門十哲のひとりで、日本橋で「鯉屋」という屋号をもった魚問屋を経
営していました。かなりの財力があったようで、芭蕉を財政面で支えていたよう
です。その杉風は、千住まで見送りに行っていますが、色々とこの旅の準備に
奔走し、無事芭蕉を送り出すことができ、その喜びと期待で万感胸に迫るものを
感じて、別れ際にひそかに涙を流していたのではないでしょうか。
それを見た芭蕉が、お礼を込めてこの句を詠んだのではないかと推察します。
私はここで芭蕉の句碑を描きながら、青々とした若葉に胸ふくらませ、「奥の
細道スケッチ紀行」の安全を祈願して1句浮かびました。
「絵にたくす 若葉萌えたる 奥の道」
自作
絵にたくす 若葉萌えたる 奥の道
す さ のう