「何の木の 花とはしらず 匂哉」
俳句の意味: 西行の歌「何事のおはしますをば知らねどもかたじけなさの涙こぼるる」を踏まえて、
神前にかしづくと、何の木の花かはわからないが、妙なる匂いがただよい、心洗われる
思いがすることだ。
旅の思い出: 伊勢神宮の外宮に到着し、この歌が歌われた「僧尼拝所(そうにはいしょ)」を探しましたが、
その場所は現在はなく、この風宮の近くにあったことがわかりました。
神宮では、僧や尼等頭を丸めた者は死人とみなし、神域が汚れるとして僧や尼は直接正宮
を拝むことはできませんでした。
そこで昔は、この近くに「僧尼拝所」が設けられ、芭蕉も僧の出で立ちであったことから、この
位置で正宮に向かって拝宮したそうです。
この場所は、現在この裏手に池があり昔は川だったそうで、川向こうに正宮がありますので、
正宮からみれば、この位置は川向こうとなり、頭を丸めた者はこの場所から拝ませてもらった
ということになります。
私がこの位置をスケッチに選んだのは、この場所の右手に昔の山道の入り口があり、現在
はとおることができませんが、昔はこの道を伝って芭蕉がこの場所に来て拝んだと思われる
からです。
その山道は現在でも人が通った痕があり、芭蕉の歩む姿が眼に浮かびます。
私もこの場所で、芭蕉の気持ちになって、川向こうにある正宮を拝みつつ描きました。