旅の思い出: 当時の寺はさびれ果て弥勒菩薩が土に埋もれて、お顔だけがのぞいていたというそのお顔
はそのままに仏像に作り変えたという大仏を描きました。
お寺の住職さんに許可を得て、大仏を安置している大仏殿へはいると、冷え冷えとして身体
の芯まで凍りつきそうで、絵を描く指がかじかんで線が真っ直ぐ描けないほどの状況でした。
住職の奥様がその様子を写真にとってくれました。
ご住職の奥様が心配して、温かいお茶とお菓子を持ってきてくださり、昼にはまさに裏山で
とれた蕗の薹のはいった汁と山菜の混ぜご飯を頂き、春を待つ山の香りを満喫いたしました。
夜の山は寒さが厳しく車の中に寝るにはあまりにも寒いため、住職さんが寺に泊まるように
と温泉風呂を準備し、夕食までご馳走になり、部屋を用意してくれました。
翌朝四時に起きて、五時に寺を出る際に、ご住職と奥様の温かいお心に感謝し、次の歌を
書き残して一路伊勢へ向かいました。
「仏寺や 春待つ山に 氷風」
「寺に寝て 汁に香るや 蕗の薹」
じょうろく
「丈六に かげろふ高し 石の上」
俳句の意味: 石の台座の上に、今は失われた阿弥陀菩薩の面影をしのばせるように、丈六(高さ8尺
約2.5m)ほどの陽炎がたっていることだ。
自作の句
仏寺や
春待つ山に
氷風
寺に寝て
汁に香るや
蕗の薹