きぬたうち ぼう
「砧打て 我にきかせよ 坊が妻」
俳句の意味: 「坊」とは大寺に付属する宿坊で、旅人の宿ともなりました。この句の背景には、
新古今和歌集の「みよし野の山の秋風さよふけて古里寒く衣打つなり」の歌があ
ります。吉野の秋の夜、砧の音を聞いて、古歌の情趣を偲び、山里の寂しさをも身
に染みこませたかったのでしょう。
旅の思い出: 昔の着物は麻でつくったものや繊維の堅いものが多かったため、生地を柔らかく
なめすために、奥さんが夜なべをして衣をたたいていました。これを「砧打ち」といい
ますが、芭蕉の頃にはすでに廃れていてほとんど聞けなかったようです。
この竹林院は大きく立派な宿坊で、私のような貧乏旅では泊まれなかったので、
吉野の中腹に降りてきて車中泊しました。その晩も月が出ていたので、車の外に
椅子とテーブルをおいてブランデーを片手に月見をしました。そこで1句浮かびました。
「山の端の 心うかれし 月夜かな」
自作
山の端の
心うかれし
月夜かな