くつ
「水とりや 氷の僧の 沓の音 」
俳句の意味: 夜中の2時前後、修行僧達が深夜の回廊を駆け回る木沓の音が、凍るような
夜気の中を響き渡りました。その厳しい寒さがこの行事の厳かな空気そのもので
あり、僧達の真摯な姿に「氷」のような冷たい厳しさを感じ取ったものです。
旅の思い出: 毎年旧暦の2月1日〜14日まで奈良東大寺の二月堂で「修二会」という国家安寧
を祈祷する行事が行われます。その間、7日と12日の夜に、堂の下にある若狭井から
水を汲み取る儀式があります。新暦では3月12日から13日の夜中2時前後に行われ
ます。私は12日夜中3時に埼玉県の家を車で出発し、東名、東名阪を抜けて奈良公
園の駐車場に11時につきました。仮眠をして午後2時頃に二月堂へいきました。
事前に様子を見ておこうと思ったのですが、もうすでに人が集まりへたに動けない状
態でしたので、そこで二月堂周辺のスケッチをしました。そこで立ちつくすこと5時間、
夕刻7時半に二月堂の松明の儀式が行われました。11名の僧が5mほどある大松明を
持って二月堂の回廊を駆けめぐります。一人目が終わった時点でお巡りさんの指示に
従ってぞろぞろと外へ出されてしまいました。そしてまた13日の夜中1時に行って余寒
の厳しい中で若狭井から若狭の水を汲み取る行事を見ました。関西ではお水取りがす
まないと暖かくならないといいますが、まさに顔がピリピリするほど冷たい夜でした。
その時次の2つの句が浮かびました。
「凍りつく 顔に灯が照る お水取り」
「水取りや ともし火凍る 僧の影」
自作
凍りつく
顔に灯が照る
お水取り
水取りや
ともし火凍る
僧の影