「春なれや 名もなき山の 薄霞 」
俳句の意味: 芭蕉は2月中旬に伊賀上野を発って奈良へ向かいました。「春なれや」は、
もう春なのだな、というほどの詠嘆の気持ちですが、大和の国原を囲む山々に
春霞が立ち籠める景色は、大和盆地特有の春景色で、あえて山の名を語らず
とも日本人であれば想像のつく世界であるということでしょう。
旅の思い出: 昔、持統天皇の頃栄えた藤原京があった大和の国明日香村で近くにある甘樫の
丘に登り、大和三山の畝傍山、耳成山、天の香具山に霞たなびく姿をスケッチして
きました。大和の山々にかかる春霞を見て1句浮かびました。
「耳成と 畝傍香具山 春霞」
その晩は、甘樫の丘の麓で車中泊しました。春の月が美しく、ちょうど柿本人麻呂
が歌った万葉の月船そのものが現れ、つぶ貝をつまみブランディを飲みながら月見
をしました。そこへ地元の塗装業を営む軽本さんがこられてしばらく一緒に月見をし
ました。その時次の2句が浮かびました。
「甘樫に かかる月船 春おぼろ」
「ブランディと つぶ貝うれしや 春の月」
その後、軽本さんとは奥様ともども親しくさせていただいております。
これが本当の一期一会です。
耳成山
畝傍山
香具山
自作