俳句の意味: 砂丘に渡る秋風は冷たく、白砂にしがみつく草の葉に吹き付ける。名も知らぬ草々が
じっと耐えるその姿はちょうど名もない私のようにはかないものだ。
旅の思い出: 平成18年11月14日(火)、夕刻7時に鳥取砂丘の駐車場に到着しました。
あたりは真っ暗で、トイレにも明かりがありません。
懐中電灯をもってトイレに行くと、微かに一匹のこおろぎの鳴き声が聞こえてきました。
この時刻に砂丘に用事がある人もありますまい。
小用を足した後、手を洗おうとしてもわずかな水しか出ませんでした。
心なしか寂しい。この駐車場には人っ子一人いない。
そこにあるのは、一匹の虫影だけでありました。
「虫の影 鳴き声むなし 厠かな」
「虫の音や とぎれ厠の 壷の中」
「キリギリス 霜夜の友は 唯一人」
「キリギリス 声遠ざかる 夜寒かな」
翌朝5時半起床。ばさばさと車の天井が鳴る。雨だ。参った。
おにぎりを1つ食べて、トイレに行く。歯を磨いて顔を洗う。
しばらく様子を見ながら、雨の止むのを待つ。
7時ごろにやや小雨になってきた。
様子を見るために砂丘へ行ってみると、道は崩れるものの、砂地であるため
雨がしみこみ意外と足場はしっかりしていた。
小高い砂山があったのでそこへ登ってみた。遠くに、薄く青いガラス板のような
海が見えた。
空が薄らと明るくなってきたので道具を取りに車に戻った。
折りたたみ式の椅子を丘の上に置いて陣取った。ゆっくりと眺めると何もない。
砂丘の上には薄紫色の草が生えていた。枯れているわけではなさそうである。
時折吹く強い風と雨に逆らうようにして、薄茶色の砂にしがみついていた。
私は、椅子の周りに荷物を置いて、傘にうずくまるように画板をもって画用紙に
雨が当たらないように腹に抱え込むるようにしてスケッチした。
9時ごろに雨が激しくなりこらえきれずに一時退散した。
車の中で色を塗ろうとしましたが、砂浜の色が気になったので、小雨模様になった
ところで、又道具を持ってもと描いていたところへ陣取った。
11時に一応色を塗り終えたので、砂の色をもう一度よく覚えて車に戻った。
11時半に駐車場を出発して米子、松江を抜けて出雲大社に向った。
時雨は時折激しくなったかと思うと、突然空が明るくなり日が射すこともあった。
「白砂に 渡る秋風 根なし草」 俊愚