「宇治川の 水泡(みなわ)逆巻き 行く水の 事反らずそ 思い始めてし」
(万葉集 2430)
自作の歌
旅の思い出: 近江高島で琵琶湖畔のスケッチを終えた後、宇治川につながる瀬田川へ来て、スケッチしました。
水の逆巻く状況を描こうと、川岸に下りたところ、かなり急な土手を両手に絵の道具と椅子を持って
降りたため、途中で転げ落ちそうになって踏ん張り左足首をくじいてしまいました。
絵を描き終えた頃、足首が膨れ上がり、ほとんど左足が使えない状況になり、丸二日氷で冷やしま
した。三日目でようやく歩けるようになりましたが、十日後家に戻ってもしばらく足の痛みが残りました。
鏡のような琵琶湖の湖面から流れ出た瀬田川が、このように逆巻き流れるのを見て、人生の流れの
ように自分の人生を思い起こしてみました。
「湖水より 流れる川の 逆巻きて 水の行方は わが身なりけり」
和歌の意味: 宇治川の水泡が逆巻き流れていくように、物事は後戻りすることが出来ないまでに、
あの人のことを思い始めてしまった。