旅の思い出: この絵は、高角山の頂上から、妻の依羅娘子(よさみのおとめ)の故郷である「角の里」に
あたる今の江津(ごうつ)市の中心部を描いたものです。
中央の橋の架かったところが「江の川(ごうのかわ)」の河口です。
はじめは、歌にあるように木の間から見える江津の町を描こうと思いましたが、今や木が成
長して、登っても登っても木の間から江津の街を見ることができず、とうとう頂上に来てしまい
ました。
登山道の入口に「万葉の古道」と書かれており、頂上付近の道は獣道のように細く、小雨が
パラついていたので、滑って危険な感じがしました。
暫らく描いていると急激な雨が降ってきたので退散し、一旦下山して石見銀山を見学し、近く
の温泉津(ゆのつ)温泉に漬かりに行きました。温泉街の細い路地の奥に「元湯」という銭湯を
見つけて入りましたが、湯の温度が45℃で強烈でした。湯船が2つあってもう一つは48℃で
した。地元の方々はこれが最高とばかり茹蛸のように真赤になるまで入湯していました。
午後3時ごろから晴れてきたため、再び高角山へ登って絵を仕上げました。
登山の入口で、「万葉の古道」という立看板を見て一首詠わしてもらいました。
「万葉の 古道のぼりし 島の星 木々のこむらに 霧立ちのぼる」
「島の星」は高角山の別名です。
「秋山に 落つる黄葉 しましくは 散りまがひそ 妹があたり見む」
(万葉集 137)
自作の歌
和歌の意味: 石見の国の高角山の木の間から私が振っている袖を、妻は見ているだろうか。
分かれるのは辛いことだ。さぞかし妻は嘆いていることだろう。