旅の思い出: この絵を描くのにかなり苦労しました。
先ずどこが弓月が嶽なのか、地元の人もよくわからず2時間以上探し回りました。
弓月が嶽は、巻向山とも穴師山とも言われ、地元のお年寄りにお聞きしたところ、
穴師山から見た三輪山と巻向山の間にある峰であることが判明しました。
最初は、地元の人に聞きながら急斜面の桑の木林をよじ登り、スケッチ場所を散策
しましたが、木の陰に嶺が隠れて満足のいく場所が見つかりませんでした。
そこへ先ほど教えていただいたお年寄りが心配そうに駆けつけ、よい場所があると
いって、私を軽四輪車で先導して案内していただきました。
かなり細い山道を無理やり登りきるようなところで、正面に絵のような画面が広がり
ました。
背後を見ると、三輪山の裾に大神神社の大鳥居が見えて、その向こうに耳成山、畝
傍山、二上山があって大和の盆地が広がっていました。
描いている間中、うぐいすやコジュッケが鳴き、コジュッケの鳴き声がじわりじわりと
よってきて、すぐ近くに来たことがわかりました。コジュッケがこちらの様子を伺ってい
ると思われる付近に山つつじが自然のままで咲いていました。そこで一首、
「コジュッケの 声すぐそこに 山つつじ 弓月が嶽は 遠くそびゆる」
「あしひきの 山川の瀬の 響るなべに 弓月が嶽に 雲たち渡る」
(万葉集 1088)
和歌の意味: 山川の瀬が鳴り響くとともに、弓月が嶽に雲が一面に立ち渡っている。
そこにはただただ大自然だけがあり、人を寄せ付けぬ神々しさがある。
自作の歌