「大船の 香取の海に 碇おろし 如何なる人か 物思はざらん」
(万葉集 2436)
自作の歌
和歌の意味: 香取の海(琵琶湖)に碇を下ろし船が波に揺れるように、人の心は恋する思いに耽る
時がある。如何なる人も物思いせずにはいられないであろう。
旅の思い出: この絵は、唐崎から比叡山へ登る入口にある三条の峰というところに位置する崇福寺址
の一つで、右側には琵琶湖が見えています。
崇福寺は天智天皇が大津に都を定めたときに建立した寺で、三つの嶺に分散して建てら
れ、壬申の乱で都が荒廃しても、この寺だけは天智天皇と多くの大宮人の霊魂を弔うととも
に、草壁皇子亡き後の遺族の繁栄と国家の安泰と鎮護を祈願する寺として存続しました。
今は人も寄り付かないような深い山の嶺に位置しており、私が入山したときには、合気道
をする一人の壮年とお会いしただけでした。
その静けさに、心を痛めるような思いに駆られましたが、山桜が人知れず咲いていて心な
しか人の訪ねてくるのを心待ちしているかのように感じました。
「三条の 尾根にねむりし 崇福寺 人待ち顔の 山桜花」