旅の思い出:   朝早く別れを惜しみながら軽本さんの家を出発して、吉野へ向かう途中で、多武峰

         (とうのみね)によってスケッチをしました。

           空気は冷たく風が強く吹き、つくしが冷たい風に震えていました。

           山桜は一部咲きで、雪柳の木でしょうか真っ白い花が満開で、遠く桜井の町が見え

         ていました。

           あまりの寒さに防寒着を出して着込み、それでもぶるぶる震えながら絵を描きました。

           足もとのつくしがかわいそうで、一句浮かびました。

               「多武峰 風に震える つくし哉」

           夕方近く描き終って、芭蕉がこの句を歌ったとされる細峠に向かいましたが、暗くなって

         きたため近くの民家で細峠の様子をお聞きしました。

           頂上までかなりの細い山道を約1時間ほど登り、頂上は木が生い茂って何も見えないと

         の事で、今から上るのは危ないといわれ、あきらめて龍門の滝の近くまで行って寝ました。




                  
          

「雲雀より 空にやすらふ 峠哉」

自作の句

多武峰 

風に震える 

つくし哉

明日香村 多武峰
俳句の意味:  雲雀のさえずりが下の方から聞こえてくるが、この峠の上で雲雀よりも高い空の上で

         休んでいるとは思いもかけぬことだ。
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