フランス象徴派詩人コーナーへ戻る
5 酔いどれ船

われ無感の河を下るが如く、(・・・アンパスィブル)
船曳の誘いを感ぜず;(・・・アルール)
騒ぎ立てるアメリカインディアンが船曳どもをひっ捕らえ(・・・スィブル)
弓矢の的にと、色とりどりの柱に裸で釘付けた。(・・・クルール)

しかし、ぼくは実際、烈しく泣いた夜明けが痛ましい。(・・・ナブラーント)
全ての月は残忍で、どんな太陽も苦いとは:(・・・アメール)
きびしい愛はぼくを満した、麻痺状態に酔いしれて(・・・アニブラーント)
おお、竜骨よ、砕け散れ おお、ぼくは海へ行くのだ(・・・ラ メール)

ぼくはほとんど島と化した。ぼくの甲板の上でよろめきながらけんかして(・・・クレル)
そして糞をたれるやかましいブロンドの目をした鳥たちよ(・・・ブロンド)
こうしてぼくが航海していると、ぼくの弱い網を横切って(・・・フレール)
溺死者たちは、後ずさりしながら、眠りに落ちていったのだ(・・・アルキュロン)

時折、地球の両極と両半球に飽き飽きした殉教者、(・・・ゾーヌ)
すすり泣く海が、ぼくを優しく横に揺すり(・・・ド
黄色い吸い球のついた空しくおぼろげな花々をぼくに差し出した。(・・・ジョーヌ)
そしてぼくはじっとしていた、ひざまずく女のように(・・・ジュヌー)

ぼくは子供達に青い波間のドラド(しいら)たちを見せたかった、(・・・ドラド)
あの黄金の魚達、歌うたう魚達を。(・・・シャンタン)
━花の水泡は、ぼくの漂流を揺すってくれた。(・・・デラド)
そして、言うにいわれぬ風がときたまぼくに翼をくれた。(・・・アンスタン)

氷河よ、銀色の太陽よ、真珠色の波よ、燃え残る空よ(・・・ブレーズ)
茶褐色の入江の奥の醜い数々の座礁の痕(・・・ブラン)
そこでは南京虫に苛まれた大蛇たちが(・・・ピュネーズ)
ねじれた樹木から、黒い臭いをさせながら落ちてくる。(・・・パルファン)

君も知ってか、ぼくは不可思議なフロリダに衝突した。(・・・フロリド
そこでは人間の皮膚をした豹の目が、花々に入り混じっていた(・・・ポ)
手綱のようにぴんと張った数々の虹が(・・・ブリド
海の水平線の彼方に、紺碧の群を操るように(・・・トルポ)

ぼくは夢を見た。目がくらむような雪に覆われた緑色の夜に、(・・・エブルウィ)
ゆったりと、海の瞳へ登りつめる口づけ、(・・・ラントール)
聞いたこともない精気の循環、(・・・イヌウィ)
そして歌うたう黄色と青色の燐光が輝く目覚め(・・・シャントール)

その猛り狂う潮騒の中で(・・・マレ)
昨年の冬に、幼児の脳髄よりも幼い頭をして(・・・ダンファン)
走り回ったそして解き放たれた数々の半島が(・・・デマレ)
誇らしげに混沌状態を耐え忍んではいなかった。(・・・ツリオンファン)

ぼくにはもう何もできない、君たちの倦怠を浴びてしまった、おお波たちよ、(・・・ラーム)
綿花を運ぶ者達の航跡を取り去ることも、(・・・コトン)
旗と焔の誇りを横切ることも、(・・・フラーム)
牢獄船の恐ろしい目の下で泳ぐこともできはしない。(・・・ポントン)

自由自在に煙を吐いて、紫色の靄を浴びて、(・・・ヴィオレット)
このぼくは、壁のような赤味を帯びた空に、穴を開けてやった。(・・・ミュール)
そしてこのぼくは、人のよい詩人達にえもいえぬジャムを運ぶのだ、(・・・ポエット)
太陽の苔と青空の鼻汁を(・・・ダズュール)

われ船具なんぞに無頓着、(・・・エキパージュ)
フランドルの小麦またはイギリスの綿花を運ぶ(・・・アングレ)
わが船曳どもの大騒ぎがおさまる頃(・・・タパージュ)
自分の望むがままに河を下るに任せていた。(・・・ブーレ)

もしぼくがヨーロッパの水を望むならば、それは森の池、(・・・フラシュ)
黒く冷たい池で、そこはかぐわしい黄昏の頃、(・・・アンボーメ)
悲しみにあふれて、うずくまった少年が、弛めて放す(・・・ラシュ)
5月の蝶のようにか弱い舟を。(・・・ド メ)

ぼくは、恒星の群島を見たそして島々を(・・・イル)
気が狂った空が、航海者に開放している島々を:(・・・ヴォギュール)
━君が眠り、亡命するのは底なしの夜なのか、(・・・エグズィル)
百万羽の金の鳥たちよ、おお未来のすごさよ━(・・・ヴィギュール)

さて船であるこのぼくは、入り江の髪の毛の下に沈み、(・・・アーンス)
大旋風によって鳥のいない大空へ巻き上げられた、(・・・ウゾー)
このぼくは、モニトル艦もハンザ同盟の帆船も(・・・アーンス)
海水に酔っぱらったこの骨組を救いはしなかったであろう;(・・・ドー)

ぼくは見た巨大ないくつもの沼地が醗酵して、簗(やな)となるのを(・・・ナス)
そこでは井草の中で怪獣レヴィアタンが丸ごと腐っているのを(・・・レヴィアタン)
べた凪の最中に海水が砕け散る、(・・・ボナス)
そしてその先遠方は、滝の渦が逆巻いて(・・・カタラクタン)

幾月の間、ぼくは追い続けた、いくつもの牛舎を訪ねるようにして、(・・・ヴァシュリ)
ヒステリックに暗礁に襲いかかる波浪を、(・・・レスィフ)
マリア様の光り輝く御足を夢想だにしなかった、(・・・マリ)
その足が、息切れぎみの太洋の鼻面を押さえることができるとは(・・・プスィフ)

ぼくは知っている、稲妻に引き裂かれた空を、そして竜巻を、(・・・トローンブ)
そして砕け散る大波や潮流を:ぼくはそうした夕暮れを知っている。(・・・スール)
鳩の群が立ち騒ぐような夜明けを、(・・・コローンブ)
そして時折ぼくは見た、人が見たと信ずるものを(・・・ブール)

そしてその時、ぼくは詩の中で浴みした。(・・・ポエム)
海の詩、星の光を受けて、乳色にかがやき、(・・・ラクテソン)
緑の空をむさぼりながら、青ざめて漂い、(・・・ブレム)
そして恍惚として、物思いに耽った溺死者が時折沈んでいく。(・・・デソン

子供にとって酸っぱいりんごの果肉より甘い、(・・・スール)
緑色の水が、樅(もみ)の木でできたぼくの船の船体に浸み込んだ。(・・・サパン)
そして、青ぶどう酒と反吐の汚れを(・・・ヴォミスール)
自ら洗い流し、舵と錨を散り散りにしてしまった。(・・・グラパン)

このぼくは走った、電気でできた衛星に名誉を傷つけられて(・・・エレクトリク)
狂った板、黒い海馬に護送されて(・・・ヌール)
その時、7月の日々は、棍棒を振ってたたきつぶそうとしていた。(・・・トリク)
熱心なじょうろのための群青色の空を(・・・アントヌール)

暴風雨が、海上でのぼくの目覚めを祝福した。(・・・マリティム)
樹の枝よりも軽々と、ぼくは波の上で踊った。(・・・ フロ)
犠牲者を永遠にころがすといわれている波の上で、(・・・ヴィクティム)
十夜もの間、船尾灯の愚かな目を惜しむこともなく(・・・ ファロ)

ぼくは低く傾いた太陽を見た。神秘的な恐怖に汚されて、(・・・ミスティク)
長く凍える海が紫色に照らし出されているのを。(・・・ヴィオレ)
はるか昔の演劇に出てくる俳優達のように(・・・アンティク)
波は鎧戸の身震いを遠くの方まで転がし伝えている。(・・・ヴォレ)

ぼくは身を震わせた、50里の彼方で不平を言う気配に(・・・リユー)
怪獣ベヘモの発情とものすごい大渦巻マルストロムの唸る気配に(・・・エペ)
青い不動の永遠の製糸工、(・・・ブルー)
ぼくは古い手すりのあるヨーロッパを懐かしむのだ(・・・パラペ)

ランボーへ戻る
そこでは、突然、青海原を熱狂的に染め上げて、(・・・デリル)
そしてゆったりしたリズムが真赤な太陽の下で流れる。(・・・ジュール)
アルコールより強烈に、われらの竪琴の音よりも雄大に、(・・・ リル)
愛の赤茶けた苦しみが醗酵するのだ(・・・ラムール)