わが心根を悟りてし、かの女の眼に胸のうち、
かの、あゝ、女にのみ内証の秘めたる事ぞ無かりける。
蒼ざめ顔のわが額、しとどの汗を拭い去り、
涼しくなさむ術あるは、玉の涙のかのひとよ。

その眼差しは彫像の眼差しに似て、
そして、遠く静かで荘厳なその声は、
はかなく消えながら、愛しい音色を響かせる。

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(ソン ルガール エ パレー オ ルガール デ スタテュ,)
(エ プール サ ヴ, ルンテーヌ,エ カルム,エ グラーヴ,エルラ)
(ランフレクスヨン デ ヴ シェール キ ス ソン テュ.)
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(カール エル ム コンプラン,エ モン クール トランスパラン)
(プーレル スール,エラス!セス デートル アン プロブレム)
(プーレル スール,エ レ ムール ド モン フロン ブレーム,)
(エル スール レ セ ラフレシール,アン プルラン)
(エテル ブリューヌ,ブロンド ウ ルース?−ジュ リニョル.)
(ソン ノン?ジュ ム スーヴィヤン キレ ドー エ ソノール)
(コム スー デゼメ ク ラ ヴィ エグズラ)
3 よくみる夢

( 西田 訳 )

われはよくその夢を見る。奇怪で心に残る夢、
よくは分からぬ女(ひと)なれど、われと相思相愛の仲
夢見るたびに異なりて、同じ女(ひと)とはなり得ない
他の女(ひと)にもなり得ない、されど、われを愛し理解し給ふ。  

( 上田 敏 訳 )

彼女はわれを理解するがゆえに、わが思いは透けて見え
あの女(ひと)にとってのみ、ああ!秘め事は消え
あの女(ひと)にとってのみ、蒼ざめしわが額の汗、
あの女(ひと)ぞのみ、涙してその汗をぬぐい涼しくさせる術を知る。         

常によく見る夢ながら、奇やし、懐かし、身にぞ染む
嘗ても知らぬ女なれど、思はれ、思ふかの女よ
夢見る度のいつもいつも、同じと見れば、異なりて、
また異ならぬ思ひびと、わが心根や悟りてし。

あの女(ひと)は、褐色の髪か、赤毛か金髪か?━われは彼女の名も知らぬ
その人の名は?われは優しく鳴り響くその人の名を思い出す
この世を去りて久しい、わが愛しき人々の呼び名かと      

(ジュ フェ スヴォン ス レーヴ エトランジュ エ ペネトラン)
(デュンヌ ファム アンコニュ,エ ク ジェーム,エ キ メーム,)
(エ キ ネ,シャク フ,ニ トタ フェ ラ メーム)
(ニ トタ フェ ユノートル,エ メーム エ ム コンプラン.)

栗色髪のひとなるか、赤髪のひとか、金髪か、
名をだに知らね、唯思ふ朗ら細音のうまし名は、
うつせみの世を疾く去りし昔のひとの呼名かと。

つくづく見入る眼差しは、匠が彫りし像の眼か、
澄みて、離れて、落居たるそのその音声の清しさに、
無言の声の懐かしき恋しき節の鳴り響く。