会社員として新たに通う通勤路、都会では意識的に時間が流れ、都会の外では無意識の
うちに時が流れる、都会は人が作り、都会の外は自然が作る。
快晴の朝、埼京線の窓越しに現れた富士山に新鮮さを感じて
「冬晴れや 富士がそこまで 来りけり」
恵比寿商店街のアーケードの下で、タバコの吸殻を片付けるボランティアの社員を見て、
会社勤めの悲哀を感じて
そで
「袖寒し 吸いがら拾う ボランティア」
飼い主の後ろに隠れるようにしてついてゆく子犬と目が合って
「飼い主の あとゆくチワワ 冬の朝」
恵比寿のビル街を通り抜ける折りにふと空を見上げ、都会と自然との不釣合いを感じて
「有明の ビルの間に間に 籠もる月」
路上の落ち葉を掃いていた人の姿が消え、厳しい寒さの訪れを感じた朝
「路地を掃く 落葉の影も 消えにけり」
代官山の公園近くの通学路にて、小学生が元気よく学校へ向う姿を見て
あか きぼうし
「紅い葉と 黄帽子の群れ 通学路」
代官山の坂を登る折に有明の月を見て、何かほっとするものを感じて
「空青く 梢にかかる 白い月」
帰宅時恵比寿の駅前で、ある政党の街頭演説の騒音にうんざりして
「イデオロギー がなるマイクや 冬の街」
大宮駅前の新装開店日の夕刻、帰宅客を呼びとめる店員の頑張る姿を見て
「開店日 声のはずむや 年の暮」
埼玉新都市交通「内宿」の駅にて中秋の名月に自然の安らぎを感じて
「中秋の 月軽やかに 雲に乗り」
むらくも
「村雲や 月は冴やかに 浮かびけり」
内宿の駅にて雨上がりの月を見て
「雨去りて ぽっかり浮かぶ 夕月夜」
平成13年8月に第2の人生をスタートさせることができ、毎日埼玉県伊奈町の自宅から代官山の会社まで約2時間かかって通った折、晩秋から初冬にかけて歌った俳句を集めた発句集を紹介致します。