定年退職の年わずかに不安をおぼえて、第二の人生について静かに考える、目に付くもの
すべてが心細く、それでいて何やら小さな希望のようなものも見えてくる、自然は徐々に色
づき、自分の夢は静かに膨らんでいく。
春二月、大島へスケッチ紀行の折り、目に付くものすべてが不安に見えて
「風荒く 雨に震える 島椿」
高校同期会で市ヶ谷駅に降り立った折り、街灯に照らし出された花の美しさに誘われて
しょく
「燭の火に 雪かと惑う 桜かな」
市ヶ谷の夜桜を見物した折に昔盛んにここで花見をしたことを思い出して
「夜桜や 思い出に酔う 宴かな」
早朝、家の近くの桜を見て、自然の美しさに自分の未来を託して
「青空や うす紅色の さくら花」
四谷外堀公園の桜が散る姿に自分の未来へのわずかな不安を覚えて
「重たげに 枝先揺れて 散る桜」
しゃが
四谷外堀公園の土手に群生する著莪の花の名を知って
「花の名を 知りて安まる 心かな」
春風の吹く暖かな日に、タンポポが風に震えて勇ましく飛び立つのを見て
「タンポポの 風に翔く 胞子かな」
四谷外堀公園のケヤキの木の下で、騒ぐ小鳥の声にふと見上げると、何やら小さな希望が
沸いてくるのを感じて
「鳥騒ぐ 梢見上げる 目に若葉」
四谷外堀公園のあじさいの若葉についた露がキラリと光ったのを見て、自分の夢が静かに
膨らんでいくのを感じて
「朝露の 光る若葉に 勇み立ち」
平成13年8月に海上自衛隊を定年退職する年の2月頃から感じ
始めた心境の変化を俳句にした発句集を紹介致します