僕は、60兆個の細胞からなる人体という小宇宙の中で、増殖、変化、減少

を繰り返して生命を維持している。

 その人体小宇宙の中では、思考と欲望といった生命依存子の活動によって

進化や挫折を繰り返しながら成長し、今や時期とともに衰退しつつある。

 この僕は、生命依存子の活性化、安定化を図りつつ自らをコントロールし、

対外的事象に対処するために、心の悩みや病気と闘いつつ、勇気を振りしぼ

って歩み続けているが、いつかはこの活動が弱まり減衰し、ついには死を迎

えることとなる。

 突如として死が訪れる場合もあるかもしれないが、通常はエネルギー供給

が徐々に減少し、生命依存子の活動が衰えて、脈拍が徐々に弱まり、心肺

停止となって血液の循環が停止して死にいたることになるであろう。

 この衰退期にあっては、意識がもうろうとして痛みさえ感じない場合がある

かもしれないが、通常はあらゆる人体機能が徐々に衰えて、不便を感じつつ

も、我慢や諦めを繰り返し、時を待つしかない。

 しかし、そうした中にあっても、散る前に咲く花のように、又は線香花火が燃

え尽きる前にしきりと火花を散らす如くに、自らを奮い立たせて、死の直前まで

自分が人間としてできる全てを駆使して生き抜くことを、目下の目標としたい。


                           平成26年11月


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僕の人体